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埼玉の建築スケッチMAP 青山恭之のブログ
コラムcolumn
栃木、35年前との比較

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 6月末に、栃木への小旅行をしました。去年の夏からスタートした一軒の現場の引き渡し、4月から6月初旬まで続いたものつくり大学の授業が終了したこと、二つの公民館での講座、関わっているいくつかの団体の総会など、公私ともどものあれやこれやが一段落して、一息入れるための旅でした。

 昼前に浦和から東北線の快速に乗車。宇都宮で乗り換え、西那須野で下車して路線バスで塩原に向かい、福渡温泉の松楓楼松屋さんに投宿してゆっくりと過ごしました。二日目の帰路はあいにくの雨。来た時と逆に、バスで上三依塩原温泉口駅まで。東武鉄道にこの春登場の特急「リバティ」に初乗車。新鹿沼で鈍行に乗り換えて、新栃木で下車。嘉右衛門町(かうえもんちょう)から蔵の街の散策をして、栃木駅から東武に乗り、栗橋乗り換えで浦和にもどってくるという行程でした。

 「嘉右衛門町から蔵の街」というのは、栃木市内で、古い町並みが残されているエリアです。ここを訪れるのは二度目。一度目は、まだ大学院一年生だった1982年の冬なので、35年ぶりになります。その時は、鬼怒川の奥の方、野門という集落・湯西川温泉を旅し、その帰りに寄り道をしたのです。当時の写真と今回の写真を比較してみたいと思います。

 まず、冒頭の写真は、横山郷土館の離れの洋館です。初めて来たときに、とても印象に残った建築でした。今回もとても楽しみにしていて、降り続いていた雨も、この写真を撮るときには上がってくれてラッキーでした。横山家は、もともと麻問屋と銀行を営んでいた豪商で、店舗の両側に石造りの倉が左右対象に建てられていて、その奥座敷から、日本庭園を隔てて、この離れを眺めるような構成になっています。

 

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 その洋館の妻面部分について、35年前と現在との比較です(左が1982、右が2017)。前の時は夕方になってしまっていたこともあり、色が落ちて写っています。それが現在は、白壁と水色のハーフティンバーがさわやかに蘇っているのがわかります。木部の細部も丁寧に残してあってすばらしい。
 
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 洋館内部のパノラマです。以前は洋風のソファー・テーブルが置かれていたのですが、今は畳のみとなって床の間の存在が表に出、洋館といっても外皮だけだったことがはっきりしました。まさに、庭の点景のひとつとしての洋館だったのです。

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 ここが、「蔵造りの街」の心臓部、巴波川(うずまがわ)添いの景観です。35年間の変化が見えないくらい、時間が止まったままのようです。川のエッジのところが修景されたのと、行灯の列が、現代の観光地らしい変化でしょうか。

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 始めの横山郷土館や巴波川沿いの「蔵造りの街」より、やや北に位置しているのが「嘉右衛門町」です。旧日光例幣使道に沿って町並みがよく残り、栃木県内で唯一「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されています。実は、前回はこのエリアについては認識していなくて(伝建地区の選定は2012年)、「蔵造りの街」の後に何となく道をたどり、暗くなりつつあるなかで写真を撮っていました。最近になって古いスライドをスキャンしているうちに、ここはどこだろうと疑問をもち、調べ始めたのです。上の左の写真の「美樹美容室」という看板が決め手になり、検索をかけると、「嘉右衛門町」を示し、ストリートビューで確認することができました。35年も前、夕やみの中でさまよっていた町並みを、今回、再訪することができ、不思議な感覚を味わいました。比較してみれば、看板のたぐいが消え、すっきりしてきたと同時に、町並みはやや歯抜けになり、商店街という賑わいは遠のいてしまった感じは否めません。でも、それぞれの建物を維持し続けてきた時間は、建築の表情に厚みを与えているようです。

嘉右衛門町
 ここは、先ほどの写真よりやや北の、道が折れ曲がるあたり。看板や、道にはみ出ていた物たちが無くなり、壁の白いしっくいもきれいに塗り直されています。旧態をよく残していると感心します。この他にも見るべき建物が多く残されていることに加え、新しくても懐かしい感じの店もでき、さらに古い建物を活用して街を盛り上げるイベントも企画されているようです。これからも、アンテナを張っておきたい街だと感じました。

 

 さて、今回泊まった塩原・福渡温泉の松楓楼松屋さんを紹介しておきましょう。

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 僕の足の具合が悪く、いわゆる大浴場は無理なので、なるべくバリアフリーで部屋に温泉が、できれば露天風呂のある宿を探して、この宿にたどり着きました。これが部屋の写真。左手前にツインベッドが、右は二段上がった畳のエリアで、掘炬燵と座卓があります。左奥に洗面所と内風呂があり、そこから左の室外に見えている半露天風呂に出ることができます。浴槽への出入りも、必要十分な手すりがあり、不自由はありませんでした。畳エリアの座卓のところに布団が二組敷けるので、4人での宿泊も可。それでも、広過ぎるわけではなく、動線もコンパクトで快適に過ごすことができました。

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 部屋から外に出たところで撮ったパノラマです。目の前に箒川、その先には山があるだけです。川では、キセキレイが飛び交っていました。小さいながら庭もあって、モミジの木が一本。紅葉の時期もいいかもしれません。
(文・写真;青山恭之)