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埼玉の建築スケッチMAP 青山恭之のブログ
コラムcolumn
二度目の焼津

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 2月に初訪問だった焼津に、4月初旬に再び行ってきました。前回は、駅周辺から足を延ばしても港までだったのでやや物足りない印象でしたが、今回は、焼津という街のルーツともいうべき「浜通り」を散策することが出来ました。

 駅前通りを直進して焼津港に出た後、南へ1.5キロ続く家並みが浜通りです。東西はおよそ200メートルの幅で、東は海。西は堀川という水路によって区切られています。北に焼津港、南に小川港に接し、南北に漁師(おきもん)が住み、中間には水産加工に従事する人々(おかもん)が住んだと、追って紹介するイラストマップ「きてみてやいづ 浜通り」の解説にありました。冒頭の写真は、その中間エリアの町並みで、水産加工の店が並んでいます。

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 通りから東、海側へと通じる路地です。現在では、海との間に防波堤などが整備されましたが、かつてはこのまま直に海岸に面して、高波などの時には、こういった路地を東から西へと波が押し寄せてきたそうです。こういった路地は、人の通行というより、波を抜けさせるためにいくつも作られました。写真で右の町屋の屋根が低く勾配が緩いのは、風からの防御のためです。

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 水産加工品の店、「ぬかや」さんの店先です。店の開口部両側の足元に、溝が掘られた石柱があるのは、「波除け堰」の名残だそうで、波が来たときはここに堰板を落として、波の侵入を防ぐというものです。大津波でも来たら街全体がひとたまりもないと想像されますが、この程度で防げる波は日常的に押し寄せてきていたということでしょう。かつて保坂陽一郎建築研究所時代に都営地下鉄の駅の設計をやっていて、地下への入口に高さ70センチ程度の「止水版」というのを標準設計で設けていたのを思い出しました。

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 名物のカツオの加工品などお土産にしようと、「ぬかや」さんに入ってみました。様々な品々が並ぶ店の空間から奥に、長い土間が続いているのが目に飛び込んできました。それが上の写真です。奥が、加工のための工場になっているとのこと。古い建築様式が維持されているのです。
 また、焼津関係などのパンフレットが並んでいる棚に、「きてみてやいづ 浜通り」が目に入りました。手に取ってみると、なかなかいいのです。迷わず一部入手。これについては、今回の記事の最後に紹介しておきます。

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 そんなことをしていると、店の方が、タブレットに入ったかつての焼津の写真を見せてくれました。現在のように、大型船で遠洋に行き、獲った魚を船上で冷凍保存して、港では冷凍トラックに積まれていくというスタイルではなく、港に、魚も人もあふれていた時代の写真です。今の焼津が静かなのは、この漁法と流通の変化によるものだというのがよくわかりました。

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 店を出て、浜通りを端まで南下。青峯山(あおみねさん)というお寺に隣接し、広場のような空間があって、そこに、明治30年代に造られた防波堤の構造が、その時の石材を使って部分的に再現されていました。

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 高低差6メートルほどはあろうかという階段でしたが、頑張って登ってみました。明治の堤防が100年間の役目を終えたのは、遠くに新しい防波堤とこの写真の道路など、海との間に広い緩衝帯が造られたからです。遠くの防波堤の先に、わずかに海が見えました。家並みのすぐ裏手で波を砕いていた渚が、あんなに遠退いてしまいました。住まいも生きる糧も海とともにあった生活が、安全こそ手にいれたものの、この距離によっても見えにくくなってしまったようです。

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 帰り道、浜通りより西の道を北上しながら出会った家並みです。家の敷地が、道路から高く作られているのがわかります。日本の町屋で、ここに二段も段差を設けている家並みというのは、ちょっと思い当りません。現代のバリアフリーの見地からも考えられない。東からやってきた波が浜通りの家々を浸しながら進んできて、この段差に当たり、路地などから裏の堀川へと抜けていくという仕組みです。

 半日にも満たない散策でしたが、海という存在に直に接していた漁師街の成り立ちがよく理解できましたし、理解のための「もの」が残されているという事も貴重だと思いました。さらに、漁師の生活になくてはならない宗教施設や祭り、この街の歴史に彩を加える小泉八雲の存在などにも思いをはせることができて、焼津とやっと友達になれたような経験でした。

<きてみてやいづ 浜通り>
 B4サイズ三枚分、横約25センチ縦約109センチの長いイラストマップです。手書きの町並みの鳥瞰図に、説明が噴き出しになっています。裏面には、丁寧な解説があり、六つに蛇腹折されてB5サイズになります。コンパクトでかつ的確な情報に満ちていて、いい地図だと思いました。ネット上には、このうち一部の情報しかなかったので、サムネイル画像(表裏3面ずつ、計6面に分割)から、PDFが開くようにしておきました。

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(写真・文;青山恭之)