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埼玉の建築スケッチMAP 青山恭之のブログ
コラムcolumn
美術と街巡り・浦和 2017

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 昨年に引き続き、「美術と街めぐり・浦和」が、3月の中旬に開催されました。うらわ美術館での展示に加え、今年は15か所に展示場所を増やした「街中展」。我が家では、小野美穂・熊谷美奈子・高草木裕子の三人のアーティストによる作品が、3月13日から20日まで展示されました。

 冒頭の写真は、東棟の一階リビングの窓辺に展示された三人の小品で、左から、熊谷・高草木・小野の順です。日常の空間に、直にアートを配置しています。去年の四人の作家による展示が、それぞれ全く違ったベクトルを持っていたのに対し、今年は三人とも女性だったこともあってか、平面・彫刻・陶芸とメディアは異なるものの、ここの環境に寄り添うような表現が共通していたように感じます。

 

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 道路側の様子です。左のグレーチングのフェンスに、去年の松丸真江さんの作品の痕跡が見えています。右端の車庫空間に高草木作品。中央のブリッジから垂れ下がっているのが熊谷作品です(後ろのカツラの木と重なってしまっていますが)。小野作品は、奥の庭に展開されました。

 

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 全体の配置図を載せておきます。他の会場は、店舗内というのが主だったので雨などの天候とは無関係だったのですが、我が家の展示では、小品をサッシの内側に入れたのを除いて、みな屋外という環境になりました。会期の前半は雨が多く、また風もやっかいで、展示期間中何かと気を使いました。でもその分、この場所と直接作品が向きあうという強さがあったように思います。

 

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高草木裕子 Ambient 201701~04  油彩、ガッシュ、トレーシングぺーパー

 車庫に置いてあった雑多なものを他へ移し、比較的ギャラリーのような場所を確保したうえで、その空間に浮遊するようにコの字型+1の4面の絵画が風に揺らいでいます。トレーシングペーパーに描かれているので表も裏もなくどちらからでも見ることができ、描かれているのが血管のような細胞の網の目のような、遠近法的でなくて奥行きのある空間なので、平面作品でありながら、少しだけ三次元の空間にはみ出すような豊かな経験を与えてくれます。外部の明かりや、夜の照明で表情が変化します。予想外だったのは、音を発すること。風でトレペがクシャッとざわめく音が耳を刺激するのが、環境とのやり取りを感じさせてくれました。

 

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熊谷美奈子 Three  厚紙(ゴールデンボード)、自作手漉和紙、アクリル、胡粉、樹脂系塗料

 我が家の二棟の建物を繋ぐブリッジから吊り下げられた、鉄さび色の「下げ降り」のような鋭いフォルム。もうひとつ、その子どものようなゴールドを帯びたかたちが、逆に下から上に向かって起立して対峙しています。僕はこの住宅を設計する時、水平方向の軸線は強く意識していたのですが、垂直性は極力抑えたつもりでした。配置された木々によって、垂直性が与えられて、水平と垂直の力の拮抗が生まれたと考えていたのですが、彼女は見事に強い垂直の楔を打ち込んでくれました。そして、これも風で揺らぐのです。根本と関節の二か所が動くので、鉄の塊が昆虫の腹かなにかのように、有機的にうごめく不思議さ。

 

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小野美穂 うつろう  陶器、土

 普段は器を作っている彼女が、インスタレーションに挑戦。この時期、作物の少ない南庭の畑に、三つの山が生まれました。つやのある白い陶器による山頂部分。これは明らかに雪山を想像させます。そして、土で形成された山麓部分がなだらかに地面に続きます。この二つの部分の対比によって、白い雪山部分の造形の意思が際立つように感じられます。このように野外で見てみると、自然界には輝くような「白」というのは雪ぐらいしかないことに思い当ります。ちょうど我が家の二階のリビングからこの畑がよく見えて、この「白」が不動のもので、それ以外が「うつろう」ということなのかと、今度作者に聞いてみたいと思います。

 

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 この展覧会で欠かせないのが、「街巡り」です。去年は僕が、三日間ほぼ全会場を案内したのですが、今年は会場が増えたこともあって、北部と南部に分け、若林祥文さんに担当していただきました。写真は、3月19日に、南部の一環として我が家に訪れた一行です。中庭に面して、去年の田神光季さんによる「Colony -urawa-」という作品が継続して展示されていることもあり、皆さんに興味を持って見ていただけたのではと思っています。

 

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林舞衣子 くものかたち + 高砂小学校五年生 □(しかく)からはじまるかたち ウレタンマット

 今回、もうひとつ僕が関わった作品が、高砂小学校の西側フェンスに展開された、この作品です。これは、学校への美術家派遣プログラムとして、彫刻家の林舞衣子さんに五年生の授業に入ってもらってワークショップを行い、作家の作品と児童の作品を並列して学校から外に向けて表現しようとしました。街路空間にはみ出ること、一定期間雨ざらしになることなどの問題をのりこえながら、普通は閉じている学校の営みを、都市へと開く試みが実現したと思っています。

  また、意見交換会・シンポジウムなどのイベントも並行して行われて、行政主導型の国際芸術祭「さいたまトリエンナーレ」に対し、民間主導でより地域に密着した美術展のかたちが、模索の途上にあると言えるのではないでしょうか。来年も、挑戦は続きます。(写真・文;青山恭之)