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埼玉の建築スケッチMAP 青山恭之のブログ
コラムcolumn
さいたまトリエンナーレ巡り

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 秋晴れの日曜日(11月20日)、建築構造家の高橋さんの車で、さいたまトリエンナーレの会場を一日かけて回りました。さいたま市の広い範囲に会場が点在していて、公共の交通機関で回ろうとすると、二日では無理。今の僕の足の状態ではさらに時間がかかってしまうので、トリエンナーレのあるプロジェクトにいっしょに関わった高橋さんにお願いしたのです。あるプロジェクトというのは、韓国人アーティストのチェ・ジョンファによる「さいたマンダラ」という作品です。ペットボトルをリサイクルするために圧縮して1m角のキューブにしたもので、タワーを造ろうというものです。その構造について、トリエンナーレのディレクターチームから相談を受けたので、高橋さんを誘って、何度か打ち合わせをしました。はじめは、大宮市民会館の脇の公園に、高さ10メートルほどに積み上げるというイメージで、鉄板を構造として用いる案や、単管足場を組み合わせた構造の案など、一度はチェさんも加わって検討を重ねていきました。それが、ある時から僕らの手を離れ、場所も桜環境センターに変更され、高さも縮小されて実現したのです。
 そんないきさつがあって、まずは「さいたマンダラ」を見ようと、西のはずれ、「桜環境センターへ」。広大な敷地の中で、どこに建っているのか情報がなかったので不安でしたが、行ってみるとすぐに目に入りました。それが最初の画像です。表現はストレートに伝わってきますが、低くなったのは残念です。

 

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 脇に説明書きがあり、この場所に集まってきたぺットボトルで造られているというので、設置場所がここになったのは自然かもしれませんが、初めに大宮のタワーマンションとペットボトルのタワーを対峙させると言っていたチェさんのコンセプトは、見えなくなってしまいました。協力者として、僕と高橋さんの名前が載っていたのにはひと安心といったところでしょうか。

 

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 今度は東へ向かい、別所沼の日比野さんの船を車中から眺め、花と緑の散歩道沿いに車を走らせて、ダニエル・グェティンの門のようなオブジェとアイガルス・ビクシェの「さいたまビジネスマン」を見ながら武蔵浦和へ。駅前の商業施設の駐車場に車をおいて、旧部長公舎会場まで歩きました。かつて、県の部長クラスの職員が住宅としていた4軒の一戸建ての住宅に、4組のアーティストが表現を展開しています。住宅としてのインテリアを生かした展示2軒と、いわゆるホワイトキューブにリフォームした展示2軒に分かれていましたが、前者のうち面白かったのが、上の写真の、髙田亜規子+政子姉妹による展示です。場所の有機性のようなものが伝わってきました。

 

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 ホワイトキューブとなった部屋に、圧倒的な表現を展開していたのが、鈴木桃子でした。作家自身がちょうど取材中で、あまりゆっくり見ることができなかったのですが、生命のサイクルを表すという、鉛筆による繊細な線のうねりが、無限の時間と今のかけがえなさを訴えてくるようです。この日夕方から、一般の参加者による「消しゴムで消す」という作業が開始されるそうで、常に変化し続けて、白い部屋に戻っていくというのです。

 

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 駅前の商業施設にもどって昼食に。これで駐車場料金はタダになりました。次はさらに東へ、岩槻を目指します。桜環境センターからは直線距離で12キロ。旧民俗文化センターは、今回のトリエンナーレで最も多くの作品が集中しているとことです。ただ、映像系の作品が多く、夕方6時に来客が予定されていて時間が気になり、駆け足になってしまいました。写真はNGだったので、4月に下見に来た時の写真を載せておきます。この中庭に、枕を大量に敷き詰めたマティ・アンドラシュ・ヴォグリンチッチの作品は、不思議な感覚を呼び覚ましてくれました。

 

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 この日、どうしても見ておきたかった作品が大宮に。それも暗くなってからと、時間の問題もあり、岩槻を見終わってから浦和に6時に戻るまでの間に見るしかありません。直接はトリエンナーレ本体のプルグラムではないのですが、SMFの「OMIYAプロジェクト、都市の夢」のひとつである井上唯による「旅するキノコ in氷川参道」です。井上唯の「旅するキノコ」は、昨年11月、浦和の楽風と我が家の中庭を繋ぐ形で展開されたプロジェクトで、その様子は、2015年12月のこのコラムでも紹介しました。今年はそれを氷川参道でやりたいと、作家の井上さんや、トリエンナーレのアシスタントディレクターもいっしょに6月に氷川神社の神主さんを訪問しました。そこで知ったのは、氷川の森はかつてキノコ狩りの名所だったということ。それだったら自由に設置させてくれるかと思いきや、さすがに武蔵一宮の敷居は高く、二の鳥居より神社側は神聖なのでダメ。その南側300mにわたる「平成広場」はさいたま市が管理しているのでさいたま市がOKならば問題はない、ということでさいたま市にかけあって、展示が可能になりました。


 ところが、展示作業本番の18日(金曜日)に来てみると、参道のケヤキの大量の落ち葉があり、それを除去する作業を毎日業者さんが行っていて、キノコのオブジェなんて掃いて捨てられてしまうという大問題に直面しました。一時は、展示場所をSMF学校がある大宮市民会館付近へ変更することも検討しましたが、掃除のおじさんが、路肩の石積みの上なら落ち葉が吹き溜まりにならないのでオブジェをおいて構わない、オブジェを意識して掃除するという英断を下してくださって、一同胸をなでおろしました。
 11月18日に121本のキノコを展示し終え、19日にはさいたまトリエンナーレ本体プログラムであるSMF学校でのワークショップとして、参加者がキノコを制作して追加して、160本ほどになって完成したのです。僕は19日不参加だったので、この日に完成形を確認しました。平成広場南端の交差点に面してもキノコが広がって、気が付く人の数も増したと思われます。

 

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 キノコの展示の始まるあたりと終わるあたりに、この写真のような説明書きも設置されていました。

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 上の写真のように、街灯の明かりもあるので、キノコの光は優しくて、ホタルかなにか自然側の光にも見えます。この後、大した渋滞もなく浦和に6時前に戻ることができました。


 トリエンナーレの大掛かりな展示もいいですが、このキノコのようなさりげないアートも、都市を楽しくしてくれるものです。アートを見にわざわざ展示会場に出向くというのではなく、日常の時間と空間のなかに、アートがひょっこり顔御出す・・・。(画像は、クリックで拡大されます。写真・文;青山恭之)